時代と医療倫理の関係を過去を振り返りながら未来について考えます。
医療倫理の歴史は、基本的に欧米主体でつくられてきたものと言えます。その原点ともなる「伝統的医療倫理」とはヒポクラテスの誓いに代表されるような、伝統的な「医の倫理」のことです。その次の時代となる「バイオエシックス」とは、1960年代から70年代に北米に起こった社会運動と歩調を併せることになり、従来は頑なに一般社会から隔離され続けてきた医療へアカデミックな立場から介入していったのです。この時は医学者ではなく、哲学者や神学者による主導で成立してきた倫理なアプローチのことです。バイオエシックスは「原理主義」という理論をもとに北米の医療界に「介入」しました。実際に、哲学者や神学者らが臨床の場に立って、倫理教育者として倫理を実践し、伝統的な医療倫理を完全に置き換えていったのです。その原理主義の中でも「患者の自律性尊重の原則」は医療倫理の4原則の筆頭であり、日本での医療倫理でも広く浸透していることです。更に、1980年頃から、クロスオーバーしますが、臨床者が次第にバイオエシックスと原理主義を学んで、採り入れられつつ、臨床の現場により即した倫理的アプローチに発展していきました。それが「臨床倫理」となるなっています。そして、1990年代の原理主義批判を転機に、バイオエシックスに代わって臨床倫理は医療倫理の主流な方法論として定着していくようになりました。但し、学問としてのバイオエシックスがなくなる意味ではなく、臨床での方法論として原理主義が表面上目立たなくなったという意味のようです。原理主義はこれからも常に臨床倫理の根底にあります。