世界の医療倫理と共通する点、日本独自の医療倫理などをご紹介します。
医療の責務として、利害の抵触に適正に対処し信頼維持をしなければならない点があります。保険会社や製薬企業、医療機器の企業などの営利を目的とする企業との関係が、医療の責務に影響を与える可能性がある事を認識し、「利害の抵触」に関する情報は開示して、常に適切な行動をとらなければならないのです。これは世界的な医療における原則のひとつなのですが、日本ではこの「利害の抵触」という事が非常に軽視されています。製薬会社から資金を援助されている教授によって研究するのですから、極力、製薬会社に評価されるような結果を導きたいと考えます。こんな事の悲惨な事故として、例えば薬害エイズ等の被害が起こるのです。
世界基準から見ると、日本の場合はこのあたりのルールが甘い傾向にあります。別の例ですが、現在、遺伝子治療というのが最先端だとして注目を集めています。アメリカでは約1万人が遺伝子治療の治験に参加していますが、結果として科学的に効果と安全性が証明されてはいません。しかし、利益獲得を目指して遺伝子治療の研究者が自ら出資して企業をつくり、その企業の特許に絡んだ治療を集中して研究しています。当然、利害の抵触を無視した臨床研究を実施し、患者さんが亡くなったりしています。これは悪いケースですが、日本でもさっそくマネをしています。ある大学の教師がベンチャービジネス会社をつくって遺伝子治療の臨床実験を実施していますが、会社をつくって特許を取るのは自由としても、臨床治験は利害関係を持たない第三者に委任しなければ、公平な研究結果となり難いのが現実でしょう。